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zoom RSS 『江の生涯』の感想 その八(終章について)

<<   作成日時 : 2010/12/19 13:52   >>

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やっと『江の生涯』の感想も最後です。長かった〜。
終章の内容について、二三書きたいことがあるので、それを書いていきます。

江と秀忠との間の子が7−4=3人という説。
別に真相を暴いたっていいんです。正室の多産を疑ったっていいんです。
しかし、
「江戸時代に作られた系譜や家譜の類にはさまざまな作為がなされている。とくに母子
関係や生年月日は、真実が掲載されているとはいいがたい。」
だからといって、自分の仮説を優先して、史料の記録を無視していいとは思えないです。
仮説が他の記録で立証されて初めて、その仮説が正しいといえるようになると思います。
立証されるまでは、仮説は事実と断定できないでしょう。
史料の信憑性が高かろうが低かろうが、史料の数が多かろうが少なかろうが方法は一つです。
限られた史料の中から一番真実らしいものを丹念に探していくことだと思います。新しい
信憑性の高い史料が出てきたら、初めてそれを使って、以前の史料の記録を否定すれば
いいと思います。出てこないうちから史料を否定したら、なんでもありの世界になって
しまいます。

侍妾制度について詳しいことはわからないけれど、例に引かれている話は江戸時代後期の
話でしょう。戦国から江戸初期の話をするには適当でない例えのような気がします。
それに女中扱いでも名前は残っているので、「江の子供」の実母の件とはちがう話だと
思います。
何度も書きますけど、家康の側室と子女は資料によって異同はあっても、なんらかの
記録は残っているのに、秀忠のほうは早世した長丸以外の生母も記録に残っていないのは
解せないです。
「生母と名のることを許されず、母とも呼ばれず、歴史に名を残すこともなく消えて
いった女性たちのことも考えてほしい」
長丸の母親もいますし、それは考えたほうがいいとは思います。
でも、もし江が、この本で実子でないとする四人の子をやっぱり産んでいたとしたら、
産んだのに産んでないと言われた江のことは考えなくてもいいんでしょうか。
もう少し事実認定は慎重にされるべきなのではないでしょうか。

加藤清正の書状について、ついている訳と解説がいまいち理解できないでいます。
書状の中身については、娘婿の榊原康勝がたくさんの進物を贈ったところ、清正がそれを
咎めている、そういう内容のようです。
登場人物は、加藤清正・清正の正室水野氏・清正の側室で古屋の生母菊池氏・
清正の娘古屋・古屋の夫の榊原康勝です。
本に引用されている清正の書状は下記の通りです。あえて福田さんの訳は載せません。
___________________________________________________________________________________________________________________

 此度、娘の母方へおびただしき御音信にて候、これらの事、誰が指図にて候や、
 必ず 御無用にて候、表向き我々女ども親分にて候間、母は公界へは出ず候、
 内儀のことにて候へば、中々要らざる事に候、表向きと我々女ども方より
 申し入れ度(たし)と申しこし候へども、我々にまかせおき候へと申候て延べ候つるに、
 いかがの仰付けられようにて、必ず此方よりなされ候てよき事は指図申すべく候、
 春へなり候はば、我々女ども方より申し入るべく候間、その以後、音信も候はば、
 これこそ大坂の母と御談合候て、かの者次第になされ候べく候、必ず必ず内儀方への
 義理がましき事に、物入れまじく候、
____________________________________________________________________________________________________________________
 (注:「必ず必ず」は本では踊り字を使ってます)

福田さんの説明だと、康勝が正室水野氏に進物を贈ったので、清正が「正室水野氏は
表向きの母で、側室菊池氏は公界に出ないので、正室水野氏に贈答は不要」と言ったと
いうことですが。
「娘の母方」って側室菊池氏のことじゃないんですか? 私の理解は下記の通りです。
 正室水野氏=表向き我々女ども親分・我々女ども方・此方
 側室菊池氏=娘の母方・母(公界へは出ず)・内儀・大坂の母・内儀方
康勝が側室菊池氏に進物を贈ったので、清正が「正室水野氏は表向きの母で、側室菊池氏
は公界に出ないので、側室菊池氏に贈答は不要」と言っていると思うのですけど。
さらに清正は「正室水野氏から贈答については指図をするから勝手に贈るな、指図された
贈答をした上で、他にやりとりしていれば側室菊池氏の言うように贈ればいい、でも義理の
贈答は側室菊池氏には要らない」と言っているように私は理解しました。
もっとも全文引用ではないので、娘の母方が正室水野氏ととれる言葉がこの前後にあるの
かもしれません。

さらにその後の贈答儀礼の話がやっぱりよくわからないです。
福田さんの説明を枝葉をとっぱらって要約すると
・正室が生母でなく表向きの母の場合は、公界=表向きの世界=世間での贈答儀礼が
無用になる。
・私的な縁において、正室が生母でない場合は、正室との贈答儀礼が無用になり、生母に
義理を立てる。
ということになると思います。たぶん。つまり、
・生母ではない正室(表向きの母)には公的にも私的にも贈答する必要はなく、生母である
側室には私的にだけ贈答する。
・公的には生母ではない正室(表向きの母)にも生母である側室にも贈答する必要はなく、
私的には生母である側室にだけ贈答する。
と言っているように思えます。
……。
では何のための表向きの母なんでしょうか。やりとりしなくていいなら表向きの母なんて
いらないじゃないですか。
そもそも公的に「母」に贈答しなくていいんでしょうか。側室の子は公的には母なし子
なんですか?
いくら時代によって常識が変わると言っても正直受け入れられないです。それともやっぱり
私が現代の常識とやらに囚われているだけなんでしょうか。
そしてこのことを根拠にして、さらに江と珠姫・勝姫・和子との間に書状がない理由を、
失われたとするのではなく元々存在しなかったとして、その二つを組み合わせて、江と
珠姫・勝姫・和子は実の親子じゃないと福田さんは言っているみたいです。
私はわけがわからないです。
だって江は衣装を初姫や、千姫の娘の勝姫だけではなく、珠姫の子供、勝姫とその子供、
和子へと贈っていたではないですか。雁金屋の注文帳で。江からは贈答という義理を
果たしています。上記で言っていることと当てはまりません。
福田さんのいうところの生母でない正室が、公的か私的かわかりませんけど、物を、
しかも金のかかる呉服を贈っています。負担を軽くどころか負担ありありです。
公的だったら、物を贈っている江は、生母ではない正室でも生母である側室でもないし、
私的だったら、物を贈っている江は、生母ではない正室ではない。
うん、やっぱり江は生母ですよ。福田さんの解釈だと。
江は贈っているのであって受け取ってはいないという反論があるかもしれません。ですが
進物を受ければお返しをすると福田さんは言ってます。当然お返し、最低限お礼の手紙は
あったでしょう。
正直に言うと、書いていて、私もよくわからなくなってきました。
「書状がない」理由を言うためになんでこんなややこしいことを言わなければならない
のでしょうか。

あとがきで福田さんはこう言います。
「彼女が将軍家御台所の役割をまっとうしたことによって、『六歳年上の姉さん女房で、
多産のうえ嫉妬心が強く。将軍秀忠は恐妻の江には頭があがらなかった』というような
誤った一般認識が生じてしまったのもまた不幸な事実である」
上記のことが「誤った一般認識」というのは私も同じ意見です。しかし。それが誤って
いることを証明するのに、江の実子は三人のみ説を打ち出すのは違うように思います。
・全員が実子ではなく、側室や侍妾の子も自分の子として育てたから、「江は子供ばかり
産んで嫉妬深い」というのは不当な認識である。
・実子でない家光と実子の忠長をふつうに育ててきたから、「江は兄家光を疎んじ、弟
忠長を偏愛した」というのは不当な認識である。
福田さんの主張を要約すると上記のようになると思います。
江の嫉妬深さと偏愛を否定するのは、お江好きの私にとっては喜ばしいことです。でも
嫉妬深さと偏愛を否定するために、そんな大掛かりな仕掛けはいらないような気がします。
私は、逸話として残っている話やその他の状況を積み重ねた状況証拠で、十分、嫉妬深さ
と偏愛を否定できると思います。状況証拠なんで決定打ではないですが。
上記の理由はどこか無理があって、むしろ逆効果になる可能性があります。それが心配で
『江の生涯』を全面的に受け入れることができないでいます。

結論としては『江の生涯』について、人物解釈には同意できても、提示されている説に
ついては同意できかねるものが多い、と思ってます。なんでこんなめんどうな理由を
考えるのか理解に苦しみます。もっと簡単でいいのに、と思います。
それが今の私の気持ちです。人物解釈がいいだけに、とても残念です。

これで『江の生涯』について思うことは以上です。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
素人意見なので、無知な点、間違い等ございましたらご指摘お願い申し上げます。

※次の感想(おまけ・誕生祭)はこちら、前の感想(その七・名前その他)はこちらからどうぞ

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